最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品

10/07/2010

菅直人首相の「高度な政治的手腕」?

来日したキャンベル国務次官補が、尖閣諸島をめぐる日中間の対立について、菅直人首相の高度な政治的手腕を評価したのだそうだ。

褒めてもらえるのはありがたいことながら、菅直人首相は例の船長の釈放は、あくまで「検察の判断」だと言っている。うーむ、キャンベル氏は、では一体なにを褒めてくれたのだろう?

まあこの褒め言葉がリップサービスに過ぎず、アメリカが日中間の対立を望まず、領土問題でどちらかに与する可能性はゼロであり、だから双方が「冷静な交渉を」というのが肝心のメッセージなのは、誰が見ても明かなのだが。

まだ国務省はマシ、まだ紳士的である。

国防総省の方は先週にやはり次官補を派遣し、「尖閣諸島は(前原外務大臣の言う通り)日米安保条約の適用範囲内です」という見え透いたリップサービスの裏の本音で、「守ってやるんだから思いやり予算は全額寄越せ。普天間問題もこっちの有利な条件を沖縄県民に納得させるように」という恫喝をやっているのだから。

一方、すっかり面目を潰したのが前原外務大臣。

先週の記者会見で、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」というのは自分からクリントン国務長官に確認を迫ったものであること、その際には戦後沖縄が米国の施政下にあった際にそこに尖閣も含まれていたことも指摘し(これを言われればアメリカも形式上、反論はできない)、そこでクリントン氏が「領土問題にはコメントしない」と断った上で認めたという話だったことを、フリージャーナリストの岩上安身氏の質問への答えで、バラさざるを得なかった。

こうなると「中国の強硬姿勢」に屈する形で、裏で政治介入があったにせよなかったにせよ(ってなかったわけがない。検察が自ら泥を被るような越権判断をする動機がない)、例の船長の釈放が決まったのだという一般的なマスコミの分析は、だいぶ事実とは違うのだと分かって来る。

今朝の毎日新聞では、国連総会中のASEAN首脳との会合を控えて、オバマ大統領やクリントン氏にとって日本が中国を刺激したのは迷惑でしかなく、クリントン氏が「すみやかな soon」解決を求めると前原氏に言っていたことまで指摘されている。

民主党リベラルの現オバマ政権の基本的な姿勢と、米中間の経済関係を見ただけでも、少なくともアメリカの国益が、日本に与する「日米同盟の強化」で中国に対決姿勢を強めることではないくらいの予測は、もしかしたら前原氏や外務省は思ってなかったかも知れないけれど、ふつうに考えれば誰にでも分かることだ。

いや前原氏だって分かっているから、沖縄の日本復帰以前の状況まで持ち出してクリントン氏に確認を迫ったのだろう。

国連総会中の両者の会談のあとの会見で前原氏が語ったことが、本人の主張とはまったくニュアンスが違ったからこその必死の強弁であることも、最初からだいたい分かっていた。

クリントン氏はみごとに、前原氏の梯子を外したのだ。

それは引き続き行われた菅首相とオバマ大統領の会談で、オバマ氏がこの問題への言及を避けて「中国は大切な国だからアメリカも日本もお互いにちゃんと注視していきましょう」と言ったことを見ても、明らかだった。

日本の外務省がわざわざ、「observe」を「監視」と訳して、マスコミにブリーフィングしたことを見ても、

オバマ氏もオバマ氏で、日本側が期待した梯子をあっけなく外したのだ。

そしてその直後に、日本中が唖然とした船長の釈放決定である。

この騒動は日中間で決着したのではない。日本がアメリカの動きを見誤った結果として、ああいう決着になったことは、ちゃんと憶えておいた方がいい。。

…といって、この場では後付け話になって恐縮ながら、このブログの筆者子は、オバマ菅会談の直後にそれを予想して、Twitter上ではその旨を発言しておりますm(_ _)m。

こうなると映画作っているよりも政治評論家にでもなった方が商売になるんじゃないかまったく?

…というより、政治の専門家でもない映画作家が簡単に予測できることを、なぜ日本の大手マスコミの優秀な政治記者や解説委員の皆さんは気づきもせず報道もしなかったのか、その方が不思議だ。

僕程度の、普通の情報ソースしかなくても気付くのくらいだから、彼らが気付かなかったわけがない。

マスコミだけでなく、それこそプロ中のプロである外務省の皆さんも同様なはずだ。

つまりは国民は恒常的に騙されているのだ、そう考えた方が妥当だ。

あとで「騙されていたんだ!」とパニックにならないためにも。

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